からんころん
「俺が無理やり聞いたんだ。なんで人の財布を盗んだりしたんだ?」
「私盗ってない!」
「じゃあそれでいいじゃないか、実果子ちゃんにあんな言い方しなくても…」
「だって私疑われてたのよ!」
「千夏は本当に盗ってないんだな!?」
「しつこいっ!!もう出ていって!!」
千夏は晴紀を部屋から追い出した。
晴紀は千夏の嘘を見逃さなかった。
昔から千夏は嘘を吐く時、拳をぎゅっとして自分の太ももをポンポン叩く癖がある。
ずっと見てきたたった1人の妹だけど、千夏がやった事はいくら考えても晴紀にもわからなかった。
「なんか騒がしかったけど、兄妹喧嘩?」
「ああ…大したことないよ。心配しないで」
「そう。昼ご飯食べてくでしょ?」
「うん…」
「千夏-、ご飯よー」
千夏は、晴紀が居る間は部屋から出てこなかった。
一方、実果子はこの日、バイトにも行かず…一歩も外に出なかった。
…出れなかった。
「う~…ひどい顔……いててて……」
泣きはらした顔はとんでもなく、おまけに頭痛まで襲ってきたのだった。
「千夏ちゃんに謝んなきゃ…はあぁぁ」