からんころん

「俺が無理やり聞いたんだ。なんで人の財布を盗んだりしたんだ?」

「私盗ってない!」

「じゃあそれでいいじゃないか、実果子ちゃんにあんな言い方しなくても…」

「だって私疑われてたのよ!」

「千夏は本当に盗ってないんだな!?」

「しつこいっ!!もう出ていって!!」



千夏は晴紀を部屋から追い出した。



晴紀は千夏の嘘を見逃さなかった。
昔から千夏は嘘を吐く時、拳をぎゅっとして自分の太ももをポンポン叩く癖がある。



ずっと見てきたたった1人の妹だけど、千夏がやった事はいくら考えても晴紀にもわからなかった。




「なんか騒がしかったけど、兄妹喧嘩?」

「ああ…大したことないよ。心配しないで」

「そう。昼ご飯食べてくでしょ?」

「うん…」

「千夏-、ご飯よー」




千夏は、晴紀が居る間は部屋から出てこなかった。







一方、実果子はこの日、バイトにも行かず…一歩も外に出なかった。


…出れなかった。



「う~…ひどい顔……いててて……」



泣きはらした顔はとんでもなく、おまけに頭痛まで襲ってきたのだった。



「千夏ちゃんに謝んなきゃ…はあぁぁ」



< 58 / 227 >

この作品をシェア

pagetop