からんころん
「ナイスタイミング。ちょうど今パンが焼きあがったんだ。試食して?」
「はい…」
本当に、まだホクホクしている。
「ど?」
「おいしい…お兄さんが作ったんですか!?」
「うん。ちょっとした趣味でたまに焼くんだ」
「すごい…プロみたい」
「はは、そんなに誉めると調子に乗っちゃうよ?」
「ううん、本当に」
「ははは。や~、実果子ちゃんが来てくれるなんて思わなかったよ~。今日は嬉しいなぁ」
「あっ、私あの…」
やっと本題に入れた。
「私勝手にうかれてたんです。家も知らないなんて…」
「うん、珍しいことじゃないよ。前にも言ったでしょ。千夏友達を家に呼んだことないって」
「はい…」
「ついでっちゃあなんだけど、今からこのパン家に届けるから実果子ちゃんも一緒に行く?」
「はい…!」
晴紀の車に乗って、初めて千夏の住む家に足を踏み入れた。
千夏はどんな顔をするだろうか…
いきなり行って、また気分を害してしまいやしないか…
実果子の中でそんな不安が膨らんでいた。
…が。