からんころん

「留学!?…ってそんな急にできるもんなの!?」

「急でもないわよ。2、3週間くらい前から自分で手続きしてたわ」

「あいつ何も言ってなかったぞ…」



千夏は今朝方アメリカに発ったという。

…そこまでしても自分に会いたくないのか…と、実果子はまたまた落ち込んだ。



「じゃ…。パン焼いたから食べてね」

「ちょっと晴紀!」

「…何?」



母親が晴紀の袖を引っ張り、実果子を見ていた。



「あ…はじめまして、私あの…千夏ちゃんと塾で一緒だった…」

「千夏の友達の実果子ちゃんだよ」

「あ、千夏の友達?なんだぁ、また私は晴紀の彼女さんかと思った!この子ね、見た目は悪くないのに女の影がないのよー」

「余計なこと言うなよっ!実果子ちゃん帰ろ。じゃあな!」



晴紀はタジタジになって、そそくさ実果子を連れて立ち去った。




「…ごめんね、実果子ちゃん」

「いえ…」



結局千夏に会うことはできず…メールで謝ることにした。


深く傷ついたであろう千夏にかける言葉が見つからず、ただごめんねと…

送信ボタンを押すのにも、かなり時間がかかった。




返信は、なかった。


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