からんころん
晴紀はおばあちゃんの口を押さえた。
「ばあちゃーん、ハエがほら!ははは…」
「ハエなんかいないよ!なんだねこの子は…」
晴紀の額には大量の汗が吹き出ている。
実果子はさりげなく拭いた。
「あ、ありがとう…まだ残暑が厳しいね!はは、はは…」
「…?」
実果子はきょとんとしていた。
「またごちそうになっちゃって、どうもすみません…」
「俺が勝手に連れてきたんだから気にしないで。でもよかった、食べてくれて」
「もう…」
「いてっ、何?」
「…なんでそんなに優しいんですか」
「そんなこと……」
それからは晴紀は黙って車を走らせた。
「…?」
どこまで行くのやら…
そば屋を出てから1時間過ぎた。
「き…気持ち悪……」
「え?」
実果子は酔ってしまった。
気がつけば海が近いところまで来ていて、海沿いでしばらく潮風に吹かれた。
「ごめんね、振り回しちゃって…、俺もこんなとこまで来ててびっくりした」
「無意識だったんですか!?」
「うん」