からんころん
実果子はくすくす笑いだした。
「…あきれた?」
「少し。でもここ気持ちいいですね…」
車酔いもさめ、実果子は今久しぶりに穏やかな気分だ。
「夜の海って真っ黒ですね」
「ああ。俺昼間より好き」
「やっぱり?そうだと思った」
「ただ黒いからってだけじゃないよ。海の向こうの陸の夜景だったり、波に揺れてる月や星…闇の中の光が好きなんだ」
「へぇ…ロマンチックなんですね」
「…あ、ちょっと笑ってない?」
「そんなことないですよー、ふふっ…」
「あ、やっぱ笑ってる!」
「違うんです!」
実果子は晴紀の頬についていたネギを取って見せた。
「あ…」
「こんなとこにホクロあった?ってずっと思ってたんですけど、今やっとわかりました。ごめんなさい、気づくの遅くて…」
「いや…、はは、カッコ悪いな俺…」
晴紀ははにかんだ。
「ありがとうございます、お兄さん」
「え、何が?」
「色々です!…私、諦めません。受験も、千夏ちゃんのことも……」
「そう…。それでこそ実果子ちゃんだ!俺も…頼りないかもしれないけど支えになるから一緒に頑張ろう」