からんころん
「んー、見なかったなぁ」
「そう…。どうもありがとう」
この人からは何をされたり何を言われたりしなかったけれど…ただシカトされていた。
実果子はなんだかヘンな気分だった。
何事もなかったかのように振る舞う彼女や自分が…
みんなで一斉に謝ってくれたあの時、もう吹っ切れたと思ったのに…
実果子は頭をブンブン振った。そして、
「吹っ切るんだ、過去のことは!」
とひとりぼやき、若干周りから振り向かれつつ、地図を片手に体育館を目指した。
その頃晴紀もはぐれた実果子を探していた。
「どこ行ったんだ?千夏も見あたらないし………あれ?」
晴紀の目にとまったのは、遠くに、見覚えのある少年だった。
人混みをかきわけ近づいた。
「あの、君もしかして…………ケンヤくん?」
晴紀が声をかけた少年は、誠也だった。