からんころん
「千夏ちゃんっ…」
実果子は追いかけた。しかし人がごった返していて、それ以上先に進めず…
千夏は体育館から出ていった。
「あいつ…あんたの親友じゃなかったの?無視してったぞ」
「…気がつかなかったんだよ!私の声も小さかったかも…!」
「いや、隣にいて耳が痛くなるくらいでかかったぞ」
実果子自身も大きな声で叫んだつもりだった。
でも周りの歓声はもっと大きくて、きっとかき消されてしまったんだと、実果子は思うようにした。
「そういえば、谷塚の兄ちゃんがあんたのこと探してたぞ」
「あー、忘れてた!私も探してたの、どこにいた!?」
「中庭でちょっと話して、あとは知らん。あんた探し行ったから」
「本当にー…あーどうしよ、えーっと…えーっとぉ…」
「何うろちょろしてんだよ?しょんべんか?」
「ちがっ…もうっ!私も探してくるから誠也くんここにいて!」
「はぁ?俺もう帰んぞ」
「えーなんで?」
「俺だって…忙しいんだ。じゃーな!」
実果子は、せっかく会えた誠也ともっと話したかったけど…
「メ…」
あっという間に人波に消えてった。
「アド聞けばよかった…」