からんころん
「お兄さんが?想像つかないなぁ」
「思えば…あの頃から俺、黒しか身につけなくなったんだ」
「そう…なんですか」
「俺、逮捕歴があるんだ」
「そうなんですか…」
「……驚かないの?」
「ん?……えっ!?」
実果子は遅れてハッとし、箸をポロッと落とした。
晴紀が新しい箸を取り出した。
「はい」
「すみません、お兄さんたらヘンな冗談言うから…」
「冗談じゃないよ。本当」
ー10年前、荒れてた学校で俺はいじめの対象となった。
制服の中はいつも擦り傷やあざが絶えなかった。
ある日の放課後、
「谷塚ぁ、どっか遊び行こうぜぇ」
悪集団がそう言ってきて…断ろうものならまた殴られる。
その時の俺には逆らう勇気なんてなかった。
腕をひかれるまま…着いた所は不良のたまり場だった。
異様な空気で、俺は逃げ出したくてたまらなかったけど…
「谷塚ちゃんよ。今日から仲間に入れてやるよ」
「誰そいつ?」
別の学校のやつが睨みをきかせてきた。
「うちのクラスの優等生」
「優等生だぁ?そんなやつぁ仲間に入れねぇよ」