【短編】こんな恋もありでしょ。
―――プルルルルル……プルッ……
単調な機械音が途切れた瞬間、相手が話すよりも先に
「駅前。今すぐ来て」
そう言って、携帯の通話を終了させた。
とても一方的な電話。
だけどあたしの携帯に、折り返しの着信は“ない”。
いつからか、これが暗黙のルールになってしまっている。
人が行き交う駅前で“いつも”のベンチにポツンと座る。
ついさっきまで降っていた雨は霧雨のようになり、
空はどんより重い雲が覆っている。
閉じたヒョウ柄の傘で、
小さく亀裂の入ったアスファルトを突付いた。
駅前にある大きな時計が、一度は聞いた事のある、だけど何て題名なのかわからない音を流し始める。
21時。
はぁーっと、溜息を吐いて駅前へと視線を移した、その時。