【短編】こんな恋もありでしょ。
「……俺は忘れるつもりないけど」
「……え?」
「お前とヤッたこと後悔してる」
……ほら、ね。
だから電話にも出なかったんだよ。
だからもう会わないって言ったんだよ。
それなのに那央が来るから。
喉の奥が痛くなって呼吸が止まる。
鼻の奥がツーンってした。
唇を噛んで、せめて目にたまった涙が零れないように必死に我慢して。
「……ごめん」
そう言うのが精一杯。
「なんで、ごめん?」
「……あたしなんかとシちゃって、ごめんね」
「は?」
冷たい声に、これ以上おさえられそうにない涙。
救いは部屋の電気をつけてなかったこと。
部屋から続く玄関も暗いから、上手くすれば泣いてるって気づかれないはず。
だったのに。