【短編】こんな恋もありでしょ。
―――ブーッブブッ……ブーブブッ…
ズボンのポケットに入れていたスマホのバイブが揺れ、画面に表示された名前を見て心臓が大きな音をひとつたてる。
だけど、それに対応する間もなく慌てて出た。
「もしも……」
「駅前。今すぐ来て」
―――プツッ…プーップーップーッ……
“もしもし”とも言わせてくれない相手は一方的に切ってしまった。
おいおい、勝手な女だなぁ。
そうは思いながらも、あいつが連絡してきたのは5ヶ月ぶり。
連絡があったことに内心ホッとしてる俺がいる。
まぁ、こんな風に連絡をしてくるときは何か凹んでる時なんだろうけど。
俺は立ち上がり、今やっていた書類をカバンへ入れた。
会社で残業して終わらせようと思っていたけど。
明日は休みだから持ち帰れば何の問題もない。
スーツのジャケットを片手に持ち、反対の手でカバンを持つ。
社内に残っていた奴に声をかけると
『先輩デートっすか?』
なんて言われ心の中で、そうだといいんだけどな。って呟いた。