【短編】こんな恋もありでしょ。



―――ブーッブブッ……ブーブブッ…


ズボンのポケットに入れていたスマホのバイブが揺れ、画面に表示された名前を見て心臓が大きな音をひとつたてる。


だけど、それに対応する間もなく慌てて出た。



「もしも……」

「駅前。今すぐ来て」



―――プツッ…プーップーップーッ……


“もしもし”とも言わせてくれない相手は一方的に切ってしまった。



おいおい、勝手な女だなぁ。


そうは思いながらも、あいつが連絡してきたのは5ヶ月ぶり。

連絡があったことに内心ホッとしてる俺がいる。



まぁ、こんな風に連絡をしてくるときは何か凹んでる時なんだろうけど。



俺は立ち上がり、今やっていた書類をカバンへ入れた。

会社で残業して終わらせようと思っていたけど。

明日は休みだから持ち帰れば何の問題もない。


スーツのジャケットを片手に持ち、反対の手でカバンを持つ。

社内に残っていた奴に声をかけると

『先輩デートっすか?』

なんて言われ心の中で、そうだといいんだけどな。って呟いた。

< 49 / 100 >

この作品をシェア

pagetop