【短編】こんな恋もありでしょ。



那央に向けた傘をおろし、鞄から出したハンドタオルを差し出すと、それを受け取りながら、



「で。どした?」



何も話さないあたしに立ち上がりながら聞く、優しい声。

那央を見つめるあたしの頭に、大きな掌が乗った。



「とりあえず飲みに行くか」



呆れたように。

でも優しく笑う那央に、あたしの胸は煩く高鳴って。


でも、それがバレないように



「仕方ないから付き合ってあげる」



と悪態返す。



「おま……っ! んな可愛くない事ばっか言ってたら、帰んぞ」

「えっ?」



言い過ぎた一言に、帰る。と言われて焦ったあたしは顔をあげた。



「なーんてな。嘘だっつの、バーカ」

「那央!?」



怒ってみるものの、那央は笑って、あたしの手を引き歩き出した。


あたしは、されるがまま。

その繋がれた手に、ドキドキしてしまう。


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