【短編】こんな恋もありでしょ。
会社の自動ドアから出ると、ムァーと熱い空気が漂っている。
しかも小雨まで降ってやがる。
駅まではここから10分程度。
はぁーっと小さく溜息を吐いた俺は、軽く地面を蹴り走り出した。
駅前に着くと人の流れを全く気にせず、駅前ど真ん中に建つ大きな時計を見つめている葵(あおい)がベンチに座っていた。
“いつも”の場所だ。
ひとつ大きな深呼吸をしたあと、
「お前……いい加減にしろよ?」
そう言って葵の隣に座り込んだ。
「那央(ナオ)、遅い」
開口一番がそれかよ。