【短編】こんな恋もありでしょ。
「那央が男だったら付き合ってあげたのにー。好きじゃなくても処女くらいは捨てれたのにー」
「ってバカッ。くそデカイ声で、んな恥ずかしいこと叫ぶな!」
「うっせー、バーカ」
って……ふざけんなよ、この酔っ払いめが!
付き合ってあげたとか、どんだけ上からなんだよ。
好きじゃなくても処女くらいは捨てれたって、俺には拒否権なしかよ。
だけど当の本人は、俺が怒ってるのも無視してグイグイ酒を飲み続ける。
そんな葵を見ていただけ。
そう、ただそれだけなのに。
俺の胸の奥が、またざわつく。
本当、なんだよコレ。
俺……病気か?
いや、この間の健康診断で異常ナシだったから、いけるか。
だけど、どうも気になってウーロン茶を頼むところがチキンな俺。
届いたウーロン茶を飲みながらも、
まだザワザワ煩くなる胸の奥が気になって。
だけど葵がそんなことに気付くわけもなくて。
机に倒れこむ葵を見てたら知らぬ間に
「俺にしちゃえばいいのに」
って呟いていた。