【短編】こんな恋もありでしょ。
モテる顔。
っていうのはこういう人のことを言うんだろうなーって、素直に思ってたら、
「今の見た?」
少し離れたあたしの目を真っ直ぐに見つめて聞いたあと、ニッコリと笑う。
「ああ、うん。
いたそーだね」
多分、違う。
こういうとき、可愛げのある女の子というのは『大丈夫?』とか、『見るつもりはなかったんだけど、ごめんね?』とか言うべきなんじゃないかな。
自分の言葉を発したあとに、そう思ったけど。
「ひっかかれたかも。ヒリヒリするー」
そう頬をさすりながら、近づいてくる男の子はそんなのまるで気にしてなくて。
「葵ちゃんだよね?」
あたしの前に立って、あたしの名前を呼ぶ。
陽に透けた髪がとても綺麗だった。
ていうか、あたしこんな子知らない。
だけど、それよりも。
「ちゃん付け止めて。気持ち悪い。葵でいいよ」
あたしからすれば、そっちが気になった。
男兄弟の中で育ったせいか、何かそういうのが気になってしまう。
女の子と仲良くする?のも正直ちょっと苦手。
「んじゃ、葵。俺は那央でいいよ」
そう笑ったときに見えた八重歯が印象的だった。