【短編】こんな恋もありでしょ。
久々に葵から連絡があったのは、正月があけて少し仕事が落ち着いた頃。
いつも通り、くだらない話で盛り上がってた。
そんな時、
「あー、あたしも久々に彼氏でも作ろうかなー!」
いつもなら軽く流す会話。
だけど、その時の俺は体調が悪かったのか……なんだったのか。
葵の言った言葉をリアルに想像してしまった。
葵から男の話を聞かなくなって、そろそろ3年。
そう。
心のどこかで安心してたのかもしれない。
葵に男がいないことを。
少し酔っていたから冗談で言ったのかもしれないけど、俺にはそれを冗談だろうと思える余裕がなくなってたみたいだ。
自分でも気付かないうちに、昔閉じ込めた言葉に追い込まれていたんだろう。
葵に彼氏が出来て、例え結婚しても、俺は友達って選択を選んだ。
だって、そうだろ?
もし葵と付き合ったとしても、本気で好きって気持ちがわからなかったら?
今思ってる気持ちが錯覚だったら?
それは葵もおなじこと。
『あたし、やっぱわからない』なんて葵なら言いそうだ。
それなら、何もせずこのままの方がずっといいに決まってる。
そう思ってた。