【短編】こんな恋もありでしょ。



だけど。



「……あのバカ、まだ電話でねぇ」



心の声が、ついに漏れてしまうくらいにまで、俺からの連絡をブチり続ける葵。



あれからだいぶと経つのに、電話どころかメールの一本もない。

26歳の大人の女が、そんなことでいいのか!


連絡がついたら、恋愛云々よりもこっちで説教したい気分だ。



冷たい機械音が聞こえてくるスマホを耳から離し、通話なんてしていないのに“通話終了”ボタンを押した、その時だった。



―――ヴヴーヴヴー……

手の中で振動したスマホに慌てて出る。



もちろん、たった今、葵に電話したんだから、葵からの電話だと信じ込んで。



「もしもし!?」

『え? もしもし? なおくん、どうしたの? 何か怒ってる?』



聞こえてきたのは甘ったるいくせに艶のある声の女。



ああ、出るんじゃなかった。


そう一気に後悔した。

< 74 / 100 >

この作品をシェア

pagetop