【短編】こんな恋もありでしょ。
だけど。
「……あのバカ、まだ電話でねぇ」
心の声が、ついに漏れてしまうくらいにまで、俺からの連絡をブチり続ける葵。
あれからだいぶと経つのに、電話どころかメールの一本もない。
26歳の大人の女が、そんなことでいいのか!
連絡がついたら、恋愛云々よりもこっちで説教したい気分だ。
冷たい機械音が聞こえてくるスマホを耳から離し、通話なんてしていないのに“通話終了”ボタンを押した、その時だった。
―――ヴヴーヴヴー……
手の中で振動したスマホに慌てて出る。
もちろん、たった今、葵に電話したんだから、葵からの電話だと信じ込んで。
「もしもし!?」
『え? もしもし? なおくん、どうしたの? 何か怒ってる?』
聞こえてきたのは甘ったるいくせに艶のある声の女。
ああ、出るんじゃなかった。
そう一気に後悔した。