【短編】こんな恋もありでしょ。
「葵?」
冷静を装って、名前を呼ぶけど何の反応も返ってこない。
これが20代前半の俺だったら確実に押し倒してたな(笑)
なんて思える俺は、一応大人になったってことだな。
「どうした? 調子悪い?」
そう聞きながら、葵の顔を覗き込むと真っ赤で。
目には涙をためていた。
「葵? どうした? しんどいのか?」
プルプルと顔を振り、今度は俺の胸に抱きついてきた。
ああ、ここまでされて我慢できるほど俺は大人になりきれてなかったみたいだ。
だけど、葵だから。
相手は葵だから。
そのまま、葵を抱きしめ俺は後ろへと倒れた。
そして抱きしめていた腕を緩め、俺の上に乗っかっている葵に
「そんな気じゃないなら退け。
すぐ俺から離れたら絶対何にもしないって誓うから。
ただ……このままだったら、俺お前のこと抱く」
そう逃げるチャンスを与えた。
のに、葵は俺に抱きついて離れない。