ハナ*ハナ
チリン、チリン  チリン・・・


「あ、煉さん。
 風鈴屋さんですよ」



チリン、チリン  チリン・・・



涼しげな音色が
俺たちのまわり一帯に広がった。



チリン、チリン  チリン・・・



「すこし、見ていってもいいですか?」


そう言いながら
涼しげな音のほうへと指差した
彼女のほそく
ながい指先をみて、おもった・・・。




(・・・・・ああ、そうか・・・・・)



風鈴の音を聴きながら
となりで
うれしそうに微笑む彼女を見て
なぜ俺が今まで
彼女を想わなかったのか
わかった気がした。



出会ったとき
彼女の心のなかにはもう既に
晴信くんが、いたからだ-----。
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