ハナ*ハナ
「もう何年も使っていないから
 埃くさいかもしれないけれど」


その長屋についた矢先、老婦が言った。

案内された長屋は
老夫婦の営む茶屋からは
さほど遠くなく


『使っていない』


と言っていた割には
中も外もきちんと手入れがなされ
ひと晩泊めてもらうには
十分すぎる場所だった。


きれいに片付けられた部屋は
見ず知らずの男に部屋を貸すという
老夫婦の人柄を表すように
やさしい空気につつまれていた。




「息子夫妻がね
 住んでいたところなんだよ」


さみしげに微笑みながら
そう言った老夫婦の言葉を聞いて

その言葉に
俺も、リュウも
全てがわかったような気がして
目を伏せた。


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