ハナ*ハナ
「あ、晴信、みて!ヒバリよ!」



すこし鼻にかかった
甘くやさしい声。

その声に思わず振り返った俺は、
はじめてそこで
彼女を知ることになる。

『彼女』------おゆきさんを・・・。




小柄で細い町娘だった。

春の訪れを告げる
ヒバリのような
彼女の高く、よく響く声。

そして若い娘が着るにはめずらしい
水浅葱色の着物は、
彼女の白い肌に、よく似合っていた。


( 春のような娘だな )


それが彼女の第一印象だった。

けれど何より、
ヒバリを指差した彼女の指先・・・。


細く、長く、
まるで天を仰いでいるかのように
空を指さしていた
その美しい指先が、
何よりも強く印象に残っていた。

< 15 / 93 >

この作品をシェア

pagetop