ハナ*ハナ
「おゆき、走るな!
 また転ぶぞ!」


兄・・・なのだろうか。
彼女より
2・3年上であろう男が
走り出した彼女に声をかける。


その瞬間


「きゃっ!!」


彼女の体勢がくずれかかった。


「おゆきっ!!」



(あぶないっ)


思わず手を差し伸べそうになった時
兄の腕は
既にしっかりと妹を抱えていた。


「あ・・・ありがとう・・・」


「・・・だから、言ったろう?」


「おゆきには、転ぶ才能があるからな!」




( はははっ )


と、くったくなく笑う兄の顔を見て
娘の顔が真っ赤になる。


「もう! 晴信のいじわるっ」


そんな言葉を投げ捨てて
足早に娘は歩き出した。


「ゆーき、転ぶなよ!」


娘の背中に、兄が言葉を投げかける。


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