ハナ*ハナ
あの人のいい茶屋の老夫婦に


『少し滞在していったらいいよ』


そう言われた俺たちは
その言葉に甘えて
7日間の滞在を決めた。


事故で亡くなったという息子と
あとを追うようにして
病で亡くなった義娘が住んでいた家を
今でもきれいにし続けている
この老夫婦に
少しでも恩返しがしたかったからだ。


滞在のあいだは
いつもこの老夫婦と一緒にいた。


朝起きると
ふたりの住む
茶屋のほうへと足を運び
そして朝げを一緒に食べ
その後は夕刻まで
二人の営む茶屋を手伝った。


店がおわると
また4人で夕げを食べ
そのあとはご主人と
酒を酌み交わした。


「また、息子と飲んでいるようでうれしいよ」


そう言うご主人の目は
少しだけ潤んでみえた。




まいにち まいにち
色々な町から
色々な人たちがやってきて
たくさんの話がきけた。


毎日が短く感じるほど
ここの暮らしは俺にとって
新鮮で仕方がなかった。



そして1日が過ぎるたび

『ここにいたいな』

そういう思いにかられていた。


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