ハナ*ハナ
「やっぱり、気づいていたんですね」


彼女は
その大きな木に触れ
もたりかかりながら俺に言った。


「ここはね、子供のころに
 晴信と二人でみつけた場所なんです」


セミのなく声が
ますます大きくきこえてくる。


「わたし、泣いてしまって・・・」


「あたらしい遊び場をさがして、
 探検していたんですけど
 だんだん道に迷ってしまったんです」

 
「ほらここ、
 とても道がいりくんでいるでしょう?
 あたりは少しずつ暗くなってくるし
 わんわん泣いてしまったんです。

 ・・・そうしたら、晴信が・・・
 手を・・・つないでくれて・・・」





・・・・・なつかしい・・・・・



愛しい記憶をたどるように
目を細め、彼女は言った。


そのときの彼女の横顔は
とても寂しげで
そしてとても、きれいだった・・・。


それは俺が出会ってから
はじめて見る
おゆきさんの顔だった。

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