ハナ*ハナ
「そんな大事な場所を、どうして俺に?」


そんな言葉が
思わず口をついていた。


彼女が俺に気があるなど
これっぽっちも思わない。


ただ、ふたりの大事な思い出の場所を

『なぜ俺なんかに
 教えてくれたのだろう?』

そんな、
単純な疑問が言わせた言葉だった。



きっと
はじめて手をつないだその時から
おゆきさんは晴信くんを
慕いはじめたのだろう・・・。




「煉さんが、
 気づいてくれたからかな・・・」


彼女が、言葉をつむぐ。


「私の気持ち、
 知っていたんでしょう?」




まっすぐに俺を見据える彼女の目に

『ああ、嘘はつけないな』と思った。


どこか遠くで、鳥の鳴く
声がきこえる。



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