ハナ*ハナ
俺は、そんな彼女に伝えた。


「いや、不思議だと思って。

 さっきまでいた場所と
 この場所はそんなに遠くないのに
 こんなにも 季節が違う。

 あの場所は、ここよりも
 もっとずっと季節が過ぎていた。」

 

・・・本当にそう思っていた。
いまのこの瞬間
あの場所こそが
盛夏とよぶに
ふさわしい場所だと思っていた。


そしてなぜだろう。


夏のさかりの、あの場所より
過ごしやすいはずの
この場所のほうが
息苦しく感じてしまうのは。


いつもの俺なら
行き交う人々で
活気のあるこの町を
とても楽しく見ていられるのに
今はなぜだか違っていた。


なぜだろう・・・。
さっきまでいたあの場所に
『還りたい』と、
無性に思ってしまうのは。
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