ハナ*ハナ
あの夏草の湿った匂いを・・・
あの、すこしかびたような
土の香りを・・・
いま無性に

とおく、なつかしく思い出していた。





「・・・ほんとうに、そうですね」



傍らで答える彼女の言葉に
一瞬考えていたことが
口をついていたのかと
ドキッとした。


けれどすぐに
そうではないことがわかった。



「あの場所は
 毎年夏の時期が
 ほかの場所より長い
 ふしぎなところなんですよ。」


風鈴を耳元で聞きながら
彼女は言った。




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