ハナ*ハナ
「やぁ、煉さん こんにちは!」


ゆきさんの隣りにいた俺に気づいて
晴信くんが
くったくのない笑顔で話しかけてきた。


ゆきさんを通して
俺たちは顔見知りだった。



「久しぶりだね、晴信くん。
 ・・・なんだかすこし
 顔色が悪いようだけど・・・」


青白い顔をしている
晴信くんが気になって、俺は尋ねた。


「・・・ああ。
 じつは夕べ
 暑さであまり眠れなくて」


眠れなかっただけ、というのが
恥ずかしかったのか
彼は頭を掻きながら答えた。


そう言った彼の言葉に
俺ではなく
おゆきさんがほっとしたように
小さく笑みをもらした。


俺はそんな彼女をみて
複雑な気持ちになりながらも
彼に尋ねた。



「ところで・・・そちらの女性は?」


彼のすぐそばにいる
鴇羽色《ときはいろ》の
着物をきた女性に、目を向けた。


「ああ。
 実は・・・その・・・。
 許婚《いいなづけ》の、お市です。」


 

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