ハナ*ハナ
彼女自身
それがわかっているのだろう。

そしてお市さんの人柄を
かっているからこそ
なにも言えないのだろう。



『だれかに聞いてほしかった』と
彼女は言った。


だれに相談することもなく
だれに想いをぶつけることもなく
今まで秘めることしかできなかった想いを
俺に話したことで
彼女のこころは
すこしは楽になったのだろうか。




「おふたりはどうしてこちらへ?」


晴信くんに訊いた。


「ああ!
 おゆきが『うす井』に行ったときいて
 ぼくらも婚礼の儀につかう小物を
 見に行こうということになったんですよ」


晴信くんの言葉に
お市さんが頷く。


「だいぶ前に出たといっていたから
 会えないかもしれないと思ったんだが・・・」


晴信くんが口に手をあて
言いづらそうに
俺とおゆきさんを見比べていた。
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