ハナ*ハナ
(きっと、あそこだ )



もうその場所以外
考えられなかった俺は
その場所へと一目散に駆けだした。


その場所へは
道が入り組んでいるため
たどり着けるか多少の不安があった。

けれどそんなことを
言っている場合ではない。

俺は、ひとつひとつの分かれ道を
決してまちがえないよう
細心の注意をはらって
その場所へと向かった。


俺がめざす小さな森。


彼女と昼間過ごしたその森は
昼間のように
頭上から太陽の光がもれずに
木々が生い茂るだけの
鬱蒼とした姿に変わっていた。


俺はおぼつかない足取りで
ほのかな月明かりだけを頼りに
1歩1歩奥へと進んでいく。


風でガサガサと揺れる木々や
時々聞こえてくる
ふくろうの鳴き声。


こんなところに夜来るのは
男の俺でもこわいものがあった。


それでも・・・・


( 彼女は絶対にここにいる )


俺の自信は揺らぐことがなかった。


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