ハナ*ハナ
----------案の定、

俺の思ったとおり
人影らしきものがその場所にひとつ
ポツン・・・とあるのが目に入る。


1本
特別に大きな幹をもつ木のまえで
俺は、彼女の姿を見つけ出した。


『おゆきさん!』


俺は駆け寄って
彼女に話しかけようとした。


けれどそのとき
彼女の細い肩が小刻みに
揺れているのが見てとれた。




( ・・・泣いていたのか・・・ )



おゆきさんの泣く姿を見たのは
はじめてだった。


いつも笑顔で
俺に話しかけてきた、おゆきさん。


晴信くんの婚約が決まってからも
彼女はいつもと変わらず笑っていた。

けれどもしかしたら本当は
いつもひとり
ここで泣いていたのかもしれないと思うと
せつなくなった。


俺はそれ以上
彼女に近づくことができなかった。

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