ハナ*ハナ
「煉さぁん!」

甘く、よく響く声が
背後から聴こえる。

その声の主が誰なのか、
ふりむく前からわかっていたくせに


「ああ、おゆきさんか!」


ふりむきざま、そう答える自分は
わざとらしくはなかったかと、
どきどきしていた。




(なにを気取っているんだ・・・俺は・・・)



そんなふうに思ってしまい、
思わず恥ずかしさがこみあげてくる。


そんな俺の心を
知ってか、知らずか、
下から覗き込むように見上げる彼女を
なんだかとても
かわいく感じてしまう。


おゆきさんは
背が高いほうではないから
背の高い俺を
下から覗き込むように見るのは
いつものことなのに
その仕草が
なんだか今日は
無償にかわいくてたまらない。
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