ハナ*ハナ
昨晩遅くに戻ってきた俺は
リュウに土下座をして頼み込んだ。


『彼女の願いを
 かなえてやってほしい』と。


リュウは何も言わなかった。

ただいつものように黙々と
趣味の錦絵を描いていた。


だからきっと
俺のいうことなんて
聞いていないと思ったのに・・・。


俺の目頭が、不意に熱くなった。



( ばかなことをした )



そんな気持ちが
胸いっぱいにこみあげてきた。


リュウには昔から
不思議な力が備わっていて
俺はそれが
時にひどくうらやましかった。


それは
俺たちの母親とおなじ力。


双子で生まれた俺達なのに
その力は
弟のリュウにしか授からなかった。
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