ハナ*ハナ
『人々を幸せにするために
 神さまが授けてくれた力』


俺たちの母親は
いつもそう言って笑っていた。

その隣りにはいつも父がいて
父は普通の人間だったけど
仲むつまじい夫婦だったと
今でも思う。


野から山へ。
山から野へと。


俺達は転々と
この地をまわった。

今の俺とリュウみたいに。


けれどある村で
数年過ごしたある日


『人々を幸せにするために
 神さまが授けてくれた力』


そのせいで
両親は命をおとした。


普通の人間にはない
特別な力・・・。


その村に雨が降り続き
作物が駄目になり
村人はみな
飢餓に苦しんだ。


そんなとき俺の母親が
この村を呪っているんだと
うわさになった。


それは人々の心を怒りへと導き
邪へと変えた。


鬼のような顔に変貌した
村人たちの手によって
母は殺され・・・

父親もその時
母をかばって死んだ。

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