ハナ*ハナ
 「自分を慕っている相手に
 おまえは自分の
 婚礼衣装を縫えと言ったんだぞっ!
 それが彼女にとって
 どんなに残酷なことかわかるのかっ!!」



俺は、彼をまくしたてる。

彼女の気持ちに気づいていながら
そんなことをする
こいつの気持ちが信じられなかった。



そんな俺を彼はじっと見て
そしてとても
強い口調でこう言った。



「・・・だからこそ・・・
 ゆきが僕を慕っているのを
 知ったからこそ
 僕は彼女に
『婚礼衣装を縫ってほしい』と
 頼んだんです。」


「僕は、ゆきの伴侶にはなれない。
 ましてや、
 彼女の想いに答えることも・・・。
 だったら、どんな残酷なことをしても
 ぼくのことを忘れさせたかった・・・。
 そしてゆきには、
 誰よりも幸せになってほしいんです」



「昨日の昼間、
 ふたりとお会いしましたよね。
 そのとき笑っているゆきを見て、
 思ったんです。 
 ゆきと煉さんが付き合いはじめたのなら
 ・・・ゆきが新しい恋をはじめられたのなら
 こんな嬉しいことはないと・・・」



目の前で真剣に言う晴信くんの声に
俺は、愕然とした。


彼が誰よりもゆきさんを思い
心配している気持ちが
ふかくふかく伝わってきたから。

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