ハナ*ハナ
その《思い》は
ゆきさんのもつ
《想い》とは違っていたけれど

それでも彼が
ゆきさんを思う気持ちは
本物だと、俺は感じた。



ふらっ・・・と
晴信くんが
ぬかるみに足をとられ、もたつく。


俺は彼の腕をしっかりと支え
何も言わず、微笑みあった。


彼女の想いに気づかずに
ただ幸せそうに笑っている彼を
俺は少なからず憎いと思っていた。


けれどそうではなかったことを
俺は知った。



だれよりも彼女を思う
彼だからこそ

自分を諦めさせ
彼女を新しい幸せへと導く為に
故意にひどい行いを
彼女にしていたのだと。


それは彼にとっても
とてもつらく
胸の痛むことだったに違いない。


俺はもう彼に何も言えなかった。


傘をさしていたはずの俺たちの肩は
いつのまにか濡れている。

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