ハナ*ハナ
白い花
『5本松の3本目
 真白な花を結んでおき
 叶えたい願いを綴っておくと
 願いが叶う』


おゆきさんは
どこからこの話を聞いたのだろう。

俺たちがこの町にやってきて
もう1年がたつ。


そのあいだ
町娘たちのあいだで
浸透したこの言葉を
俺ははじめて後悔していた。


・・・・・いや。
後悔したのは
この言葉にじゃない。


かといって
今までリュウとふたりでやってきた
この家業のことでもない。


後悔しているのは俺自身。


俺のばかで稚拙な思いから
おゆきさんも、晴信くんも

そして俺は
リュウすらも
不幸にしようとしていることに
はじめて気がついた。


『人を幸せにする呪いしかかけない』 


それを信念にやってきた
リュウの気持ちを
おとしめようとしていた。


それはリュウだけじゃなく
リュウに受け継がれている
殺された母の思いすら
踏みにじる行為だったことに
ようやく気づいた。

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