ハナ*ハナ
「私はこれから『うす井』に、
 糸をもらいにいくところなんです」


「ああ、『うす井』
 あそこはいいですよね。
 この辺の呉服屋では1番ですし
 なんといっても装飾品の質がいい。
 でも、糸もおいているのは知らなかったな」


「あは。そうですよね。
 普通、呉服屋では糸は売りませんから!」


「私は、亡くなった母が
 『うす井』の奥様とお友達で
 それで仲良くさせてもらっているんです。
 晴信の着物を縫う時に、
 それに合わせる糸に迷っていたら
 『今日入る糸がいいんじゃないか』って、
 奥様が・・・」


「・・・そうだったんですか。
 ぼくは、『茅』で
 草履をみようと思っているんです。
 近いですから
 用心棒かわりに馳せ参じましょう!」


「用心棒!? 素敵です!」



パッと瞳が輝いて、
彼女の黒い瞳が一層おおきく輝いた。



(・・・・・かわいいな、おゆきさん)



そんな思いが
あたたかく
胸いっぱいに広がってくる。
 
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