ハナ*ハナ
俺は走る速度をあげた。

鼻緒が指の間にくい込んで
うっすらと皮のむけた感触がする。


けれど、俺は走りつづけた。
5本松のある、あの場所へと-------。


晴信くんが帰ったあと
いちどは止んだ冷たい雨が
また少しずつ降りだした。



( ふたりが会う時刻は、
  もう過ぎただろうか )


太陽が雲に隠れ、時間が読めない。


( たのむから、間にあってくれ )


おゆきさんが考え直し
もしかしたら来ないでくれることを祈った。


走って、走って・・・。


俺はやっと、
5本松のふもとへとたどりついた。



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