ハナ*ハナ
そして最後に
左へ10歩、歩いたとき、
俺は約束のその場所に、
2人の姿を見つけた。


リュウは正体がわからないよう
決して依頼者には顔を見せない。


それは何かあったときのため
リュウを守る
俺が考え出した防衛策。



リュウに背を向けながら
おゆきさんは
大きな1枚岩のほうに体を向けて
目をつぶっていた。



『 願いは、天へ昇る 』


いつかリュウが言っていた。



依頼者から立ち上る
『気』を喰らい
『思い』は『天』へと導かれるのだと。



リュウの言っていることは難しく
凡人の俺にはよくわからなかったが
『気』は『生気』だと
いつかリュウは言っていた。


『生気』がなくなれば
人間は疲労する。

『気』を喰らわれた依頼者は
しばらくそこから
立ち上がれなくなるのだと。


『願い』の思いが強い人間ほど
その『気』を喰われる量も多いようで
人によっては数分間
気を失うこともある。


話だけはきいていたけど
実際に
リュウが願いを叶える場面を
俺はこのとき
はじめて見た。


リュウが彼女の背中に手を当てた。


するとリュウの指先から
煙のようなものがのぼり始める。


最初は白かったその煙は
黄色や紫、緑へと
淡い淡い色をつけ
最後には
赤い煙となって
天へと昇っていった。

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