ハナ*ハナ
「それが彼女の願いだったんなら
 しょうがないだろう」


「・・・ちがう・・・」


俺は言った。
振りかえり俺は
リュウにむかって
やり場のない気持ちを吐き出した。



「彼女は本気で
 あんなことを願ったわけじゃない!
 俺がちゃんと気づいていれば・・・
 彼女にも、
 おまえにも、こんなことさせずにすんだんだ!」


俺の目に、
にがい
にがい後悔の涙が浮かんだ。


その涙のせいで
リュウの顔もにじんで見える。


「・・・じき目が覚めるさ。    
 それより顔が見られたらまずい。
 行こう。」


手にもった傘を広げ
リュウは歩きだした。


俺は気を失った彼女が心配だったが
リュウの言うことも
もっともだと思い
その場を立ち去った。

もし今、正体がばれてしまえば
彼女と会うことも
これが最後になるかもしれないと
思ったからだ


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