ハナ*ハナ
「『幸せにしてください』」


空を仰ぎながら、リュウが言う。


「『相田 晴信を
 だれよりも幸せにしてください』」


俺は目がまるくなった。


「それが彼女の新しい願いだ」


雨はもう、止んでいた。

リュウは差していた傘をたたみはじめる。


「俺が行ったとき彼女は
 『願いごとを変えたいけど、叶いますか』と
 たずねてきたよ」


「え?」


「おまえは知らないだろうけど・・・」


相変わらず気のない、リュウの声。


「俺は、この力を使って
 人々を幸せにしたい。
 だから恨みや憎しみの願いは
 聞き届けないと誓った」


「・・・ああ」



「だけどな、煉。
 俺が叶えてやろうとしても
 叶えてやれない願いもあるんだよ」



「・・・えっ?」


それは俺がはじめて聞く話だった。





 


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