ハナ*ハナ
「今日は、暑くなりそうですねぇ」


帯から
萌黄色の扇子をとりだし
彼女は俺に
やわらかな風を送ってくれた。


まだ6月だというのに
陽が
ジリジリと照りつけている。




ふと横を見ると
色の白い彼女の頬は
ほんのりサクラ色に蒸気していた。


その瞬間
自分の中をめぐる血液全てが
とてつもない勢いで
逆流したかのような錯覚に
俺はおちいった。



「こ、今年はっ、
 猛暑らしいですからねっ」


気づけば、それだけ言うのがやっとだった。





(・・・・まずいな・・・・)



このままでは、
リュウの言ったとおりに
なってしまいそうだ。



彼女のことは 


( かわいいな ) 


とは思ってはいたけど
それ以上の感情は
持ち合わせていなかったはずなのに・・・。
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