ハナ*ハナ
エピローグ
「せっかくの日に雨なんて残念ねぇ」


黒の紋付羽織袴をおれに着せながら
母が言う。


この紋付羽織も袴もすべて
俺の大切な人が
涙にかえて
俺のために縫ってくれた
大切な衣装。


「天気ばかりは
 どうしようもないですからね」


俺は苦笑いで母に話しかけた。


けれど、なぜだろう・・・。


せっかくの晴れの舞台に
シトシトと降り続くこの雨が
不思議と俺は
いやなものではなく感じていた。


音もなく
静かに降りつづける霧雨が
なぜかとてもやさしく
なつかしいものにすら俺は感じた。



『今日俺は誰よりも愛しい人と、結縁する。』


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