現実主義者‐リアリスト‐

Aの×

私は父親を知らない。

「アンナ!早く支度して!彼との待ち合わせに遅れちゃう!」
「わかってる!」
私は母子家庭で育った。母親はまだ若く、私が17歳だと言うのにまだ30歳だ。だが紛れもなく私は母の子であり、私の母はその人だった。特別不自由もなく、母親が若いことは私にとって自慢でもあった。
その母が近々結婚をする。代議士で離婚歴有りの子持ちの男だ。どっか遠くの町の人らしく、母の仕事場、小さいバールなのだがそこで知り合い今の経緯に至る。私は後数ヵ月で学校が終わるためそれを期にとのことらしい。まだ若い母だ。子はいるが初婚であるし私も初めて父親ができる。その喜びを密かに噛み締めていた。無論母の結婚に反対はしない。いつもよりお洒落した母を見て頑張れ、と思うばかりだ。
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