文学乙女
「こういう暗い場所にいたら、もっと暗くなりますよ」






三枝さんは穏やかに笑った。






三枝さんを見るなり、あたしは小さく笑う。






「−もう、こんな時間か」





三枝さんは腕時計を覗くと、落としたリングノートを拾った。






そして、あたしのカバンを持って立ち上がる。






「行きましょう」





三枝さんは中腰になって、手を差し伸べてきた。





三枝さんの手を借りて、あたしはゆっくり立ち上がった。






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