文学乙女
「あの……」





「はい?」





三枝さんを見るなり、一瞬言葉が出なかった。そして、勇気を出すかのように、あたしは口を開く。





「あの…敬語、使わないで…普通に話していいですよ」





「……」





三枝さんは、無言でじっとあたしを見る。





ヤバっ……!





変なこと言ったから、絶対シラけられたかも……(・・;)





「あのっ…ごめんなさい、変なこと言ってしまって」




あたしは慌てて言い直す。




「何考えてんだろう、あたし……」





挙動不審になりまくっているあたしに対し、三枝さんは何も動じなかった。





そして、穏やかな笑みを浮かべて、口を開く。





「僕も、同じこと言おうと思ってたんです。敬語で話しちゃ、堅苦しいかなって」





「はあ……」





あたしがポカンとしているところに、西海さんが下へ降りてきた。





「まあ、二人ともここにいたのね。どこにいるか探したわよ」





「すいません。暑かったんで、ここで涼んでたんです」





三枝さんは、スーツの上着を脱いだ。





「そう。今、上でケーキ頂いたから、呼びに来たのよ」





「ケーキ?」





「もう、いろんな種類があって迷っちゃうわ。二人とも、早くいらっしゃい」





西海さんはにこやかに上へ去っていった。






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