文学乙女
「もう、そろそろ戻りますか…」





三枝さんは立ち上がる。





「せっかく呼びに来てくれたんだし」





「はい」





あたしは椅子から立ち上がり、座った椅子をもとの位置に戻す。





「あ、そうだ……」





三枝さんは、スーツの上着を取る手を止める。





「今度また、お茶飲みに行きますか」





「―え?」





「うまいケーキのお店、見つけたから」





三枝さんはニッコリ笑う。




突然の誘いに、あたしは戸惑う。





「…無理かな?」





「あ、いえ…大丈夫です」





あたしは首を横に振る。





戸惑うものの、どさくさ紛れにOKの返事をしてしまった。





本当は、少し考えたかったけど、仕方がない。





「よかった…。断られるかと思って、ヒヤヒヤしたよ」





三枝さんは、ホッとした顔で言った。





「じゃあ、後で日にち決めようか?…秀佳ちゃん」










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