文学乙女
それは、今、一番会いたい人が図書館で働いてるからである。





あたしは館内のカウンターを遠くから覗く。





忙しそうに働く図書館司書の面々。





玄関前の返却カウンターで、返却された本を黙々とスキャンをしている若い男の司書を見る。





あたしはどきっとした。





あの人だ−。





その人を見た途端、すごく胸がどきどきしてきた。





茶色に近い黒っぽい髪。





180センチぐらいの長身。





ハンサムに近い顔付き。





白と濃いグレーのカットソーの重ね着にジーパンの今風スタイル。





その流行りの着こなしに、シンプルなカーキのエプロンがぴったりである。





返却手続きを終え、彼はあたしを見る。





「こんにちは」





柔和な笑みで、快く挨拶してくれた。





一瞬固まったが、はっと我に返り、おずおずと頭を下げる。





挨拶されちゃった(*^^*)





嬉しさのあまり、思わず舞い上がりたいくらいだった。





舞い上がって万歳三唱したい気分。





やるとすれば、心の中でだけど。





カウンターを通り過ぎても、胸の高鳴りは、まだ止まらなかった。





落ち着かなきゃと自分に何度も言い聞かせながら、館内を回る。





ロータリーに近い中央図書館は、本の種類が一番豊富。





他の図書館にはない郷土資料室や、古い掘り出し物の本がぎっちりある閉架書庫もある。





(閉架書庫は司書しか入れないため、読みたい本があれば、司書に頼まなければならない)






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