文学乙女
立ち上がって周りを見渡すと、さっきより人混みがますます凄まじくなった。





雑踏から抜けたくても、人が多すぎて、思うように抜けられない。





とにかくここを抜けて、宣ちゃんに電話しなきゃ!





あたしは必死で人混みを抜けようとする。





今、踊ってるよさこいチームの演舞が終わり、チームリーダーがステージでインタビューをされていた。





今は見物してる場合じゃない!





あの人も今頃いないのに気付いて、探してるかも知れないもん。





あたしはケータイで宣ちゃんの番号を検索して、電話をかける。





しばらく待ってみるものの、宣ちゃんが電話に出る気配がない。





人混みにのまれて、ひたすら探し続けているだろうけど……。





あたしは小さく息を洩らして、電話を切った。





何回も電話をかけたら、却って気を悪くさせちゃうからである。





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